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Ossanの研究所です。

2019/01/22(火)早稲田大学「映画映像」映像制作実習作品上映会「ふたたま」「もぐら」「湛えて」「めぐみ」感想。

今年も行ってきました。
https://wasedamovie2017.wixsite.com/wasedamovie2018

昨年たまたま行ったら、思いのほか楽しかったし、その後に繋がる「出会い」があったのもあって今年も行ってみたのでした。
今年も楽しかったなぁ。各作品はできてない事はたくさんあるのかもしれないけども、俺は楽しかったです。

「ふたたま」

うお、これは理解不能な作品なのでは。。。。
と思ったのが最初の印象。どちらかというとコントに近いかなぁ。
「LIFE」っていうNHKのコント番組の「宇宙人総理」を思い出す感じ。

ギリギリなんとかなってるけども、滑ったコントになっちゃう寸前という危ない橋を観る側も一緒に渡る作品、かな。

前半のほうは役者さんがモゴモゴ喋ってる感じでセリフがほとんど分からなくて残念。
役者さんが悪いのか編集上のトラブルなのかはちょっと分からないけども。

ニラとタピオカはもっと生き物っぽい感じになってたほうが「宇宙人が違和感のある生活を地球上でおくってる」感が出たような気がするけども、それだと他の食材も動いてもらわないとバランス取れないかなぁとかも思いつつ。

あと、雨の中来たっていう感じに見えない男性が気になったかな。びしょ濡れで水をポタポタさせながらも気にせずに部屋の中をウロウロ、とかのほうが良いかも?とか思ったり。
若干、突き抜け切れない、作った側の常識人な感じがそんな感じで色んなシーンで出てて、うーむ、となったのでした。

やるならもっと突き抜けてよ!って思っちゃうような、物足りなさとかを観る側が抱える感じはあったかな。

「もぐら」

今回の4作品の中では俺が1番好きな作品。
作品の中に吸い込まれるように惹かれて、スクリーンを愛おしく思うくらいに見つめた作品。

車の窓の外の街。それが全て美しく見えるのは、なぜだろう、普通の街なのに、何であんなに美しいのだろう、と思う。
主人公が「なんで外はキラキラしてるのだろ」と、きっと思いながら街を見てるのだろうけど、それが色濃く映し出されていて、切ないのでした。

車の窓に寄り添いながら街をぼーっと眺めるのとか、好き。
加藤才紀子さんが良い役者だなぁと。彼女が窓の外を見つめてるだけで、心がギューってなる。
観てる私が「ハル」にどんどん愛おしくなって、彼女が可愛くて、恋をしていってしまう。それくらい良い。

ギリギリな時期に撮影を繰り返したそうだけども、本格的に冬になり始めた時期に撮ったのが映像としてとてもプラスになったのではないかなと感じるシーンがたくさんあって、結果オーライってやつなのかもしれん。
空気が冬の香りがしてくる、あの雰囲気。

客といる部屋は暖かいけど、外は寒い。
車の中は暖かいけど、外は寒い。
デリヘルの仕事が来るのを待つ場所は、暖かくも寒くもない。
店にいる人たちは、暖かくも寒くもない。

もう1人のデリヘル嬢と一緒に帰る車の中、寒くなってしまいそうだったけど、赤信号で止まって、走り出したらやっぱり暖かくなった。

湖は遠くて釣り堀に来た、外は寒い。
でも夜明けの工場の近くは、寒かったけど夜明けの空が暖かくなった。


上手いなぁ、ほんと。
2人のデリヘル嬢が笑顔になると、赤信号で止まってた車がジワリと走りだす、とか好き。

主人公の「ハル」ほど、私は世間を冷たく感じてはいないけども、街をあんな風に見た事が、作品を観た私の側にもいつかあったように感じるというか思い起こさせるというか、そのあたりが涙が出そうになるほど好きなのでした。


上映後の作品評価トークで「お母さんを見つけた後に車を飛び出す必要はあったか?」という話があったけども、母を探しに車を飛び出して、見つけられずに街の中で1人立ち尽くす後ろ姿のシーンが良かったので、あれを使うには「車を飛び出す」で正解だったと私は思うんですよ。

ただ、車を止めるのが遅い!っていう(笑)
「おかぁさん。。。?」のセリフの後、すぐに車が止まらないとさぁ、って思いました。勢いで飛び出して行った感が皆無になっちゃって。
街中で急ブレーキできない、とかだったんだろうけど、そこは演出でどうにかしてよおおおおおおおおおおお!!!!
と思った。

あと、飛び出して戻ってきた後「ごめん」なのかな。。。
いや「ごめん」だよなぁ。。。
いや、なんか違うな。。。とか、いろいろ思うシーンでした。
悪いシーンって意味じゃなくて、ちゃんと「必要に消化不良」になるシーンで好き。

「ハル」と「けいた」が実は兄弟、っていう設定なのだそうだけども、作品ではそれは分からなかったかなぁ。
その裏設定なしで、たまたま出会った男女の2人ってだけの話でも十分良い作品。

あ、エンディングロールはもっとシンプルに三分の一の長さでも長いと思います。
観客側の気持ちが冷めちゃうんで、もったいないと思うなぁ。

「湛えて」

女性の幽霊が不動産屋に気に入られてストーキング、最終的に幽霊とストーカーが心を通わせてエンディング、っていうホラー作品だと思ってたんだけど、トーク後の総評で全然違う作品だった。
なので、全然感想が書けないんですよ、、、これ。。。
どうしてこうなった。。。

主役の兎丸愛美さんは美しかったです。
すみません。
作品が悪かったとかではなく、勘違いして観てたので正常な感想が書けないのです。って感じです。
すみません。

「めぐみ」

素晴らしい作品。
あぁ、人をとことん見てる作品だなぁ、と同時に、優しいなぁって。
そして、主人公を演じた村田奈津樹さんもそうだけども、役者さん全員が完璧。

かぁさんが過去を茶化さないといられない、のもわかるけど、一線を超えてんじゃね?
とぉさんが私に会いたいのはわかるけど、この会ってる時間は意味なくね?
みたいな、セリフになってない気持ちが村田奈津樹さんの演技で全部態度に出てきてて、あぁ、良い。

ますいたかみちさんが演じる父。
娘と話をしたいけど、上手く会話が続かないし、でも一緒にいたいし。
なんか娘、俺と一緒にいると機嫌悪いし、でも一緒にいたいし。
どうしよう。で、美術館。
あぁなんて不器用な父なのでしょう。愛おしいよ父ちゃんwwwwww
凄い!不器用が突き抜けてるよ父ちゃん!!って思っちゃった。良いシーンだと思う。
笑っちゃったもん、美術館のシーンw

突然「うわあああああああ!おっしゃる通りですうううううううう!!」って感じのことを主人公が母に怒鳴るわけですが、それも含めて全部良い。あぁもう、それね、そうよ、そこで言って良いよ。っていう。
あの怒鳴るシーン、役者さん的には難しいよね、きっと。
怒鳴ってるうちに「うおおおおお」って気持ちにならなきゃダメだし、ちょっと説明っぽいセリフだけど、説明っぽくなっちゃダメだし、めっちゃ難しかったんじゃないかな、あのシーン。

とぉさんがお気楽な人、と、かぁさんは思ってるけども、娘は「それだけの人じゃねぇ気がする、けど。。。」と思春期の成長の中で父の中に「大人」を感じてちょっとしたショック、というか「父は大人だったんだ」という事実に気づいてなかった自分への嫌悪、もちゃんと出てるのよね。
あぁ、それ分かります、分かります。こっちが大人になったら初めて分かる、大人の事情、大人な人が我慢してること、それに気づいた時の、それまで気づいてなかった自分自身への嫌悪と恥ずかしさ。

上手いっすねぇ、ほんと。

なので、主人公は「今までかぁさんは良い人と思ってたけど、ひょっとして大人になり切れてないだけ?」ってのにも思春期の成長の中で気づくわけですね。あぁもうそりゃ、めぐみさん、イライラもしますわ。

母を演じる宇田川さや香さん、過去の失敗を茶化してたら、大人になった娘に怒鳴られて大人になる、っていう感じ。
目線の演技とか含めて完璧すぎて凄い。
でも、怒鳴ってきた娘に「ごめん」とかも言わないんだよね。言いたいんだけど、どうしよ。。。って。
なので、やっぱり母は娘が大人になった事に戸惑い、それでも大人になれなかった。のだよね。

そして最後に気づく「義理の父は家庭に居場所が「たま」にない」という事。
それを主人公の義理の娘が大人になって「帰ってくるの遅かったじゃん」と「帰ってきて良いんだよ」と優しくなるのだった。
「のぼるって名前だけど、給料は上がらないんだよね」「それは困る」みたいなセリフとか、大人な冗談。

めぐみさん、あなたはもう大人だ。

4作品の中で最も「人」を描けている作品だったと思います。


以上、4作品の感想でした。