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[駄文]2020/01/19(日)早稲田大学「映画映像」映像制作実習作品上映会「形をとって」「ななめの食卓」「見えない糸」「ゆらめき」感想。

今年も行ってきました。
www.waseda.jp


今年は昨年まで会場だった大隈記念大講堂とは違って、井深大記念ホール。
いやぁ、ホールもトイレもロビーも暖かくて非常に助かりましたよ。。。(寒さがこたえるお年頃


しかも日曜日の開催!平日に仕事の午後半休を取って行ってた私には朗報!!
パンフレットも用意されてて、今後に早稲田松竹で上映会があるようなら、パンフレットの余りは是非とも配布いただきたいところ。
パンフレットには映像製作実習の講師陣からのコメント(是枝監督のコメントがもちろんあります)作品の概要、出演者、スタッフ、の作品への思いがシンプルながらも丁寧に記載されていて非常に良いです。


今年は4作品。
脚本のレベルが高い年になった、というか、企画段階で「これを作品にしたい」と立脚点に置いた、その視点が非常に(良い意味で)学生っぽくない作品が多かったのが今年の特徴でしょうか。
スタッフとして参加した学生も「これに関わりたい」とやってるわけなので、他の学生さんの視点もそのような位置だったのだな、と思うと凄みと頼もしさを感じます。


とはいえ、悪く言うと、優等生過ぎてなぁ。。。もうちょっと冒険が欲しいですかね。。。とか、私のようなオッサンは思いますが、いや、それでも非常に作品は良いのです。

「形をとって」

この2〜3年、なんとなく多い作品のテーマである「ジェンダー」「LGBT」視点の作品。
というのもあって、小規模映画をよく観る人には「既視感」がどうしてもある、というか「あぁ、最近流行りですよね」と見られがちかもしれません。
そういう意味では「流行り」であり、さらに悪口を言いたい人らがインディーズ的な観点から「流行りに乗るにしても3年遅い」と言ってくるかもしれません。


しかしながら、私としては逆に一過性の「流行り」にしないためにも、このテーマはこうして色々と継続して新しい作品が出るべきだとも思うのです。


私がたまたま観た、矢崎仁司監督の「風たちの午後」と登場人物の関係性は近しいですが、この作品の女性は真正面から思いを伝えたのでした。
そこもまた、今の時代だからこそなのかもしれません。


映画としては、何かブツブツと切れる感じと役者の方々のやりとりが常にどこか「早送り」感があって「なんでそこの会話に間がないのだ。。。」と思ったり。
彼氏が来た後に部屋をソロっと出て行ったけど、傘を投げてるのか投げてないのかわからん感じとか、うーん。


どういう感情になっていて、何をどう表現したかったのか、あたりをあのシーンはもうちょっと何かなかったですかね。。。
他、登場人物の女性二人は最初から常にぎこちなくて、二人の関係性が「ぎこちない」のを表現したかったのか、それとも役者の力量不足で「演技がぎこちない」のかが判然としなかったのも残念ではあります。


あとはエンディングテーマの曲調が作品と全く合ってなくて(歌詞は合ってると思います)そこは誰かがちゃんと指摘してあげたほうが良かったのではないかと。


それとフィルム感のある映像は、主人公の彼女がフィルムカメラを愛用してるから、という演出でしょうか。
そういう「味」のある映像演出は今回の4作品の中で一番私は好きでした。


主人公がカメラのファインダーから覗いた、愛する彼女、の映像がちょっと欲しかったかも。。。
きっとカメラのファインダーから見る、その瞬間しか、主人公は彼女を正視できなかったのだろうから。


そういう意味では、この作品に付け足して欲しいのは好きな人を見つめる時の「恋心」でしょうか。
回想シーン、私はあそこでちょっと泣いたので、入れ方は良かったと思います!(上映後のトークで色々と話が出てたので、一応)

「ななめの食卓」

今年の作品で私が一番好きだったのは、これ!
いやもうすごい。スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!
というのが正直な感想。


「こういう家族が世の中にあるだろうな」と、脚本を書いた方が想像した事がもはや、すでに、すごい!のです。
上映が始まって数秒で「うおおおおおおおお!この関係性を描くかああああああああああああ!」と唸りました。
と、同時に「むむ、学生さんがなぜこの視点を持てたのか。。。」と謎が謎を呼んだのでありました。


よほど、日頃から「人」を見つめていないと思いつかない題材に思うのです。
なので、上映後トークで「繊細」と是枝さんが表現したのは、その「見つめる視点」だと私は解釈しました。


作中の二人だけの家族が、彼女を失っても、すぐに「家族」としての形を失わなかった、その納得感も役者さん達の演技にあって。
冷蔵庫にメモが貼られてないって撮影後に気づいた話(笑)も完璧に結果オーライになるように作り上げてて「修理に来るから冷蔵庫をとりあえず綺麗にしてた」の流れに置けるのは現場の必死さが作り出した極上の演出でしょう。


メモとカレー。
カレーは食べられなかった、メモはもちろん捨てられなかった。
そうだよな、と思う。


前と変わらない椅子に座ってる。そしたら斜めになってた。
そうだよな、と思う。


「そうだよな」と観てる側に作品を通して納得させる事が出来る、というのは、とても難しいことだと思う。
それにも関わらず「そうだよな」がこの作品には沢山あった。


それは例えば、クーラーボックスをご近所さんに借りてくる「間」も含めて。
ご近所さんに突然「冷蔵庫壊れちゃって、ちょっとの間だけクーラーボックスお借りできませんか?」とお願いに行って、戻ってくるのって、そうだよね、これくらいの時間だよな、っていう。
全部「そうだよな」なのであった。


冷蔵庫の中から、メモを見つけた時、そして、カレーを食べる前に彼女が「おかあさん」と呼んだように聞こえた時。
素晴らしかったです。泣きました。
高間さんの演技が素晴らしくて。好きだなぁ。。。


本当に素晴らしい視点、そして、完成度の高い作品、です。

「見えない糸」

「社会派」と言われる作品になりましょうか。
この作品に流れる重いテーマの中、若い監督さんや脚本家が軽率にやりがちな「突然、登場人物が感情を爆発させる」みたいなのもなく。
この家族は、長い時間をかけて冷静にバランスを取るプロセスがあったのだろう、と感じさせる。


作品を撮っている間、よく若い学生さんたちは耐えられたな、とすら思う。
心が重くなって体調崩したりしなかったのかしら、と思うくらいに。
この作品も「ななめの食卓」と同じく、学生という若い立場でこの視点を持ったという部分でのスゴさを感じたのでした。


家族の日常がじわじわと「ほどけていく」という感じの描き方が「崩壊」とは違う、切ない悲しみを伴う。


そして、極めて素晴らしいと思ったのが、
「どうして私たちだったんでしょうね」というセリフだろうか。
これを脚本として、セリフに絞り出せたのは強烈だなと。


作中に描かれている、家族も、無罪となった彼も、誰も間違っていなくて。


最後に父はチラシを持って出た後、再び配り始めたのか、それとも配らなかったのか。
そこは描かれなかったけども、どちらでもないような終わり方となったのは作品としては正しいのではないかと思う。


私は、配らずに家族の元へ帰ったのだろう、と想像したけども。
さてどうだったのだろうか。

「ゆらめき」

もやもやするけど、爽やか!
観てる側は部屋を出たタイミングがよくわからんまま「え、いつの間に外に?」とか、なんでコインランドリーの「外」に座ってんの?、とか(普通、中で寒さしのぐんちゃうんか)とか違和感がすごいよ!
とか思いますが、爽やか!もうそれだけでいい!


個人的には「あぁ、これぞ学生さんが作る映画。。。色々と雑で、どこかファンタジー感がある現実世界、、、良い。。。」とか思って楽しませて頂きました。


夜中の公園で出会った自転車に乗った女性、なんて、コインランドリーで洗濯物を抱えて出てきた彼よりも怪しいよ!やばいよ!
なんでついて行くのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!とか思いましたけど、ま、いいや。


なんかでも、冬の寒さのような感じが伝わって来なかったなぁ。。。
昨年の「もぐら」なんて、空気の冷たさが手に取るように伝わってきていたのに。
それに、山の上から見る街のきらめきも「もぐら」の車の中から輝いて見えてしまっていた街の風景よりも、きらめきが無くて。


コインランドリーから出てきた彼は何となく、どんな人か分かるから、まぁ良いとして。
公園で出会った女性、どんな人なのか、ちょっと描かれて無さ過ぎないかい。。。


うん、もうちょい。


どちらかというと、主人公を演じた小向なるさんの顔面の可愛さで全部どうにかなってる感がなきにしもあらず。