2023/01/21(土)早稲田大学「映画・映像」映像制作実習作品上映会「おはぎ」「わたし(たち)の家」「花と修羅」「誰かの栞」感想。
昨年の2022年も、その前の2021年も上映会に行ったんですが感想書いてないなぁ。
なんやかんやバタバタしてて文章を書く気力もなかったんだろうか。。。
というわけで今年はちゃんと書きます!
今年の2023年(年度だと2022年度)の作品は内容がとてもバリエーションがあって。
全て違う思想!全て違う作風!っていう、この上映会ならではのモノが戻ってきた感がありました。
昨年度は感想書いてないですが、どこかしら見つめている点や事が全ての作品に近しいものを感じて、作風も何となく空気感のようなものが似ていて「あぁこれがコロナ禍の制約の影響なのだろうか、、、」と思ってしまっていたのですが。
今年はどれもこれも尖ってる点が違っていて最高でした。
そうそう、これだよこれ!って観る側に興奮がありましたね。
「おはぎ」
無口な旦那と明るく人とコミュニケーションができる近所の人にも好かれてる妻。
うちの祖父母もこんな感じだったわぁそういえば、と観る側に「あるある」と感じさせる夫婦。
妻がなんかの病気で倒れて、幽体離脱しちゃうのはストーリーとしては、ある種の王道展開なわけですが。
その「誰もが見た事あるストーリー」で何を見せたかったのかってあたりは観る側にも十分伝わる作品だったように思います。
夫婦役をされたお二人の人柄で作品が成立してた感がありつつも、絶対に入れ込みたい関係性は歪つな感じもあるけどもそこに存在できてたと思います。
気になった点としては、妻が倒れた連絡がきた電話の内容を娘がエスパーのように言い当ててたり、商店街で倒れて救急車呼ばれたであろうに、あずきを旦那に渡してくれた和菓子店の店員さんが何が起きたか知らんようなセリフだったり(普通、商店街に救急車来てたら皆んな知ってるよね)と、終始、どこかしら宇宙人的(人間のコミュニケーションって、そんな感じではないよなっていう)なコミュニケーションが登場人物の間に、ちらほらあるのが気になりました。
老夫婦の二人の心や、動揺からくる行動を描く事に重点があるので、周りの人たちの動きまで作り込めてなく、あと少しその辺りが惜しい点のように思いました。
旦那が記憶を頼りに、おはぎを作るシーン、もうちょっと長くても良かったんじゃないかなぁ。
あそこがこの作品の核になる部分なわけですし、何かなかっただろうか。
とはいえ、心がとても暖かくなる今の季節にはピッタリの素敵な作品だったと思います。
「わたし(たち)の家」
今回の4作品の中で、最も未完成かつ、手を加えたら最も良くなりそうっていう期待感のある作品。
この未完成品を仕上げられるかどうかは、作った監督がどれだけこの後に周りの助けを得て、広い視野で七転八倒できるかどうかにかかってるかなと感じました。
上映会当日(!)に付け加えられた冒頭のシーンは、上映会中に先生方の総評でもあったようにセリフがボソボソで何を言ってるか分からないっていうツラさはあったけども。
黒い背景に文字で「彼は〜〜だった」とか入れる、とか、セリフを言わないって形での表現もあると思いますので探ってみて欲しい。
恋した人、愛した人との別れの空虚感がちょっと欲しいというか。写真をノートに貼り付けるのがどこか幸せ感もあるので余計に。
でも、別れてから時間経ってるから何やかんや整理してるって事だったわけだし、うーん、難しい。
それとロッキングチェア、なんか最初に1回出てから二度と出てないのも気になるんだけども。後にも出てたっけ?
他、何か出てきた男性の関係が総評でもあったように観る側には「新しい恋人」もしくは、主人公を狙ってる人、って感じに見えるんで、それで良いのかどうなのかっていう。
二人で最後にイチゴを食べてたシーン、食べ方がそれぞれ違ってたんだけども、
(片方はイチゴのへたを持ってカブりつく、片方はへたを取ってから口に運ぶ)これって何か演出意図はあったんでしょうか?
たまたま役者さんのクセが出ただけか?w
なんかあちこち気になる点があるんですけども、私は好きな作品です。
「花と修羅」
映像はとても綺麗だし、役者の選択もとても良いのだけども。
青春モノのマンガとかラノベとかあたりでよくあるシーンやストーリーを切り刻んで繋げた感じがどうしてもあって、監督が伝えたかった事、もしくは監督が見つめている事、のようなモノがあまり分からない作品だなと思いました。
監督自身の心を外にあまりさらけださないように作ってたのかもしれない、と思うくらいに。
他の作品は「こういうテーマで伝えたい事があって」という部分が尖っていて、それゆえバランスが悪くなるっていうトレードオフの中で試行錯誤して作品が生まれた事が分かるのですが、この作品は「こういうシーンを画になる役者を使って撮りたい」という感じが全面に強く出ている感じがしました。
そういう意味では脚本よりも映像に軸足があるのだろうし、そういう作品がある事それ自体はとても良い事だと思います。
最後の自転車に乗るシーンも、そのシーンを撮りたかったのであって、そこに意味があるように思えなかったのが勿体無い。
自分を想ってくれていた後輩がいなくなって、数日で笑顔になって自転車で走れると監督が考えているなら、ちょっとサイコパス過ぎるんじゃないかな、、、
「多分、転んじゃって刺さったんだよ」と言う彼女は、事実を否定したかったのか、それとも、それが本当の真実だったと彼女だけが知っている事だったのか。
それもなんか、観る側に分からなかったんですよね。
映像はとても強いです。
いろんなシーンをそれ単体で切り取っても写真作品として成立するくらいの強さがあります。
この作品の監督の強みは、ほぼそこだろうなと感じました。
なので脚本は別の人が書いて、映像だけ集中して全力でやるっていう分業ができるプロの世界に行けば最強のクリエイターになる予感はあります。
「誰かの栞」
今回の4作品の中で最も完成されていると思いました。
古書の「栞」をテーマにする着眼点、古書店の店主おばあちゃんと、気がついたら本の虫になっていた孫。
登場人物の構成すら、完全に完成されていて「プロのお仕事ですよね?!」と思うくらい。
孫の主人公が好きなお店が無くなる事が、子供が親離れをするように巣立ちの日が近いような予感と何か重なる点もちょっぴりあって。
良い。
良すぎて、なんか1番感想短くなっちゃったわ。
以上で感想終わり。
早稲田松竹にて上映されるまでに手が入れられると思いますので応援してます!